北陸ものづくりキャリア図鑑2026-08-11監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

北陸製造業の給与水準、富山・石川・福井を比べて分かること

この記事の要点

「山根さん、正直に聞きたいんですけど、北陸で働いたら給料ってどれくらい下がりますか」と、面談で単刀直入に聞かれたことがあります。関東の機械メーカーで生産技術をされていた30代の方で、UIターンを検討中でした。

結論から言うと、県全体の平均で見れば北陸3県の製造業の給与は全国平均よりやや低い傾向にあります。ただし職種・企業規模・年代によって差はかなり大きく、「北陸だから低い」という一言でくくると実態を見誤ります。この記事では、公的統計から読み取れる全体傾向と、僕が個別の転職相談で聞いてきた体感値を分けてお話しします。数字はあくまで目安として受け取ってください。

0. なぜこの質問がいつも出るのか

UIターン相談で必ず出るのが給与の話です。生活が変わるわけですから当然の関心事だと思います。ただ多くの方が見ているのは「県別の平均給与」という粗い指標で、実際に生活設計に関わるのは「自分の職種・年代・企業規模での実額」です。この2つを分けて考えないと、条件のいい求人を見誤ってしまうことがあります。

実際、先ほどの相談者の方も最初は「石川は月給25万円くらい」という漠然とした情報だけを持って来られていて、そこから職種別・企業規模別に条件を分解していく作業に1時間近くかかりました。この分解作業をせずに「北陸は給料が低い」という結論だけを持って選考を辞退してしまう方も、僕の実感ではそれなりの数いらっしゃいます。

1. 公的統計で見る全体像

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を都道府県別・産業別に見ると、製造業の一般労働者のきまって支給する現金給与額は、北陸3県はいずれも全国平均に対してやや下回る水準で並ぶ傾向があります。これは北陸の産業構成が、大手上場企業の本社機能よりも生産拠点・地場中小企業の比率が高いことが背景にあると僕は理解しています。

ここで注意していただきたいのは、この統計はあくまで産業全体の平均であり、生産技術・設備保全・品質管理といった個別職種の実態をそのまま表すものではないという点です。繊維や食品加工など労働集約型の業種も同じ「製造業」区分に含まれるため、機械・電子系の技術職に絞ると実際のレンジはこの平均より高めに出ることが多い、というのが僕の体感です。具体的な金額は年度や職種構成によって変わるため、ここから先は僕が個別相談で聞いてきた体感値としてお話しします。

体感値で言うと、大卒未経験で入社した20代前半の生産技術職で月給22万円台〜、経験を積んだ30代主任級で27万円台〜というのが北陸の地場製造業でよく耳にするレンジです。全国の大手メーカーの同年代と比べると2〜4万円ほど低めに出ることが多い、というのが僕の感覚です。ただこの差は基本給だけの比較で、後述する諸手当を含めると縮まることもあります。

また、この差は近年縮まりつつある傾向も僕は感じています。人手不足を背景に、北陸の地場企業でも初任給や中途採用の給与テーブルを見直す動きが増えており、3年前に相談を受けた方と今年相談を受けた方を比べると、同じ職種・同じ企業規模帯でも月給ベースで1〜2万円ほど上がっているケースを複数見ています。

2. 富山・石川・福井で何が違うのか

県別の傾向差も体感値としてお伝えします。富山はアルミ・医薬品などの大手グループ企業の生産拠点が多く、給与レンジが比較的高めで安定している印象があります。石川は工作機械・繊維機械の中堅企業が中心で、企業ごとの幅が広く、業績によって差が出やすい傾向です。福井は繊維・眼鏡関連の地場企業が多く、企業規模による給与差が他の2県より出やすいと感じています。

ただしこれは県全体の産業構成による傾向であり、同じ県内でも大手グループ企業と地場中小企業では月給で3〜5万円ほど差が出ることが普通にあります。以前、富山のアルミ関連企業と福井の繊維関連企業から同時に内定を受けた30代の方がいましたが、月給は富山の企業が3万円ほど高かったものの、福井の企業は住宅補助が厚く、総支給額ではほぼ差がなかったというケースもありました。県名だけで判断せず、応募先企業の規模と業界内での位置づけ、そして手当の中身まで確認することをおすすめします。

県ごとの給与差を語るときに忘れてはいけないのが、通勤圏と住居費の違いです。富山・石川・福井はいずれも県庁所在地から30分圏内に主要な生産拠点が集まっていることが多く、東京や大阪のように通勤時間で住居費が大きく変わる構造とは異なります。月給の差だけでなく、住居費や通勤時間まで含めた実質的な生活コストで比較する視点を持つと、県別の優劣はさらに見えにくくなります。

3. 職種別に見る給与レンジ

職種によっても給与の伸び方は違います。以下は僕が転職相談で聞いてきた体感値の目安で、企業規模・地域・個人の経験によって前後します。あくまで比較のための参考値として見てください。

職種20代の月給目安30代の月給目安40代の月給目安
生産技術22万円台〜27万円台〜32万円台〜
設備保全21万円台〜25万円台〜28万円台〜
品質管理・品質保証21万円台〜25万円台〜29万円台〜
生産管理22万円台〜26万円台〜30万円台〜

並べて見ると、生産技術と生産管理は40代にかけて伸びやすく、設備保全は交替勤務手当がつく分20代・30代の実収入が表より高く見えることが多い、という傾向があります。逆に品質管理は資格(QC検定など)の有無で同じ年代でも1〜2万円の差が出やすい職種だと感じています。QC検定2級を持っている30代の方と持っていない同年代の方を比べた相談事例では、月給で1.5万円ほどの差がついていたこともありました。数字だけでなく、手当の内訳まで求人票で確認することをおすすめします。

また企業規模で見ると、従業員300人以上の中堅・大手グループ企業と、100人未満の地場中小企業では、同じ生産技術職でも20代で2万円、30代で3〜4万円ほどの差が出ることが多いというのが僕の体感値です。

4. 中小企業と大手グループ企業、なぜ差が生まれるのか

先ほどの相談者の方は、最終的に石川の工作機械メーカー2社からオファーをもらいました。1社は大手グループの生産子会社で月給は高め、転勤の可能性あり。もう1社は地場の中堅企業で月給は3万円ほど低いものの、転勤なしで裁量の大きい仕事内容でした。ご本人は最終的に後者を選び、「給与差より、家族との生活の見通しが立つことを優先した」と話していたのを覚えています。

大手グループ企業は賃金テーブルが整っている分、年功による給与の伸びが安定しています。一方、地場中小企業は個人の成果や役割の広がりによって給与が変わりやすく、早い段階で裁量のある仕事を任されるケースも多いです。僕の感覚では、入社3〜5年目までは大手グループ企業の方が給与の伸びを実感しやすく、そこから先は地場中小企業で役割が広がった方が伸びを実感しやすくなる、という逆転が起きることもあります。どちらが良いかは一概には言えず、生活設計と本人の志向によって答えが変わると考えています。

5. 比較で失敗しがちなパターンと、後悔しないための確認手順

給与比較の相談を重ねる中で、同じような失敗パターンを何度も見てきました。1つ目は「基本給だけを比べて手当を見落とす」パターンです。交替勤務手当や住宅補助を含めると総支給額で逆転することがあるのに、求人票の月給欄だけを見て判断してしまう方が少なくありません。2つ目は「県平均を自分の職種に当てはめる」パターンです。県全体の製造業平均は繊維や食品なども含んだ数字なので、生産技術や設備保全といった技術職の実態とはずれることがあります。3つ目は「前職の年収を全国相場のまま北陸に当てはめる」パターンで、これをやると「北陸は給料が低い」という結論だけが独り歩きしてしまいます。

4つ目は「初回提示額を最終額だと思い込む」パターンです。北陸の中小企業では、面接の場で条件交渉の余地があるにもかかわらず、提示された金額をそのまま受け入れてしまう方が一定数います。実際に、僕が同席した面談で、資格取得支援制度の活用を条件に月給を1万円上げてもらえた事例もありました。

対処法としては、求人票をもらった段階で基本給・諸手当・想定年収の3段階に分けて書き出すことをおすすめしています。僕が面談で使っているのもこの3段階の整理で、これだけで比較の精度がかなり上がります。

具体的な手順として、僕は次の順番で進めることを勧めています。所要時間の目安も併記します。まず求人票を3〜5社分集め、基本給・固定残業の有無・諸手当の項目を書き出します(30分程度)。次に、各社の想定年収を「基本給×12ヶ月+諸手当の年間見込み額+想定される残業代」で計算し直します(1社あたり15分程度)。この段階で表面の月給差が実は縮まっているケースがよくあります。

さらに、転勤の有無・住宅補助の条件・資格取得支援制度の3点を面接で必ず質問することをおすすめします(面接内で5分程度)。この3点は求人票に書かれていないことが多く、実際に働き始めてからの生活設計に直結するためです。最後に、全体を家族と共有し、給与額だけでなく生活の見通しを含めて優先順位をつける時間を1週間ほど設けると、後悔の少ない判断につながると僕は考えています。

(結論)

北陸3県の製造業給与は、県全体で見れば全国平均よりやや低い傾向にありますが、職種・企業規模・年代でその差は大きく変わります。20代生産技術職で22万円台〜、40代設備保全職で28万円台〜というのはあくまで体感値の目安であり、大手グループ企業と地場中小企業の間には3〜5万円の差が出ることも普通にあります。給与レンジだけでなく、手当の内訳・転勤の有無・裁量の大きさまで含めて比較する視点を持ち、基本給・諸手当・想定年収の3段階で求人票を読み直すことが、後悔の少ない選択につながると僕は考えています。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 北陸の製造業は給料が低いと聞きますが本当ですか

厚生労働省の賃金構造基本統計調査を見ると、北陸3県の製造業の給与は全国平均よりやや低い水準で並ぶ傾向があります。ただしこれは県全体の平均であり、職種・企業規模・年代によって差はかなり大きく、地場中小企業と大手グループ企業を比べると月給で3〜5万円ほど開くこともあります。給与だけを切り出して『北陸は低い』と結論づけるより、職種別・企業別に条件を確認することをおすすめします。

Q. 富山・石川・福井で給与に差はありますか

僕の体感値では、富山はアルミ・医薬品などの大手グループ企業が多く給与レンジが比較的高め、石川は工作機械・繊維機械の中堅企業が中心で幅が広く、福井は繊維・眼鏡関連の地場企業が多く企業規模の差が給与に出やすい、という傾向があります。ただしこれは県全体の産業構成による傾向であり、個別の企業ごとに条件は大きく変わるため、応募前に求人票の月給レンジと諸手当の内訳を必ず確認してほしいです。

Q. 給与以外に何を見て会社を選べばいいですか

月給だけでなく、住宅補助や交替勤務手当などの諸手当、転勤の有無、資格取得支援などの制度面も合わせて見ることをおすすめします。僕が相談を受けたケースでも、月給は低めでも転勤がなく地域に根づいて働けることを優先して地場中小企業を選んだ方がいました。給与は一つの指標であって、生活設計全体との整合性で判断する視点が大切だと考えています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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